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タモリの紙ジャケと日本のお笑い [J-POP]

タモリの'70年代後半から'80年代初頭にかけて発売されていた3枚のアルバムが紙ジャケ化され12月に発売されることがすでにあちらこちらのブログで話題になっているが、私もタモリのアルバムは今回の紙ジャケ化のリストには入っていない、発売中止の憂き目にあった「タモリ3」しか持っていないので、これはちょっと楽しみである。

タモリ

タモリ

  • アーティスト: タモリ
  • 出版社/メーカー: Sony Music Direct
  • 発売日: 2007/12/19
  • メディア: CD


タモリ2

タモリ2

  • アーティスト: タモリ
  • 出版社/メーカー: Sony Music Direct
  • 発売日: 2007/12/19
  • メディア: CD


ラジカル・ヒステリー・ツアー

ラジカル・ヒステリー・ツアー

  • アーティスト: タモリ
  • 出版社/メーカー: Sony Music Direct
  • 発売日: 2007/12/19
  • メディア: CD


「ラジカル・ヒステリー・ツアー」は正統派の歌ものだが、これ以外の2枚が4カ国語マージャン、北京放送、ソバヤなどの当時のネタを収録したものだ。20代や30代前半くらいの人はすでに昔の過激で毒を含んだネタをやっていた芸人としてのタモリを知らない人がほとんどだろう。
抱腹絶倒のネタがいっぱい詰まった廃盤になって久しいアルバムがこうして紙ジャケとして復活するというのは、芸人タモリを世間に改めて知らしめるいい機会だと思う。

実はタモリのアルバムにはこれら3枚以外にもう1枚、冒頭でちょっと触れた「タモリ3」というアルバムがある。

このアルバムは「タモリ2」の前に録音されており、そこに一部新たに録ったものを加えた内容となっている。
その内容は戦後からこのアルバムが発売された'81年当時までの日本歌謡史を数々の名曲のパロディを交えながらドキュメンタリー仕立てで展開するというものだ。
「リンゴの唄」→「サンゴの唄」、「野球小僧」→「おキュウ小僧」、「スーダラ節」→「セーケメ節」、「いつでも夢を」→「伊豆でも梅を」など、タイトルを見ただだけでも可笑しい曲が満載なのだが、ところがこれらの昭和の名曲をパロった楽曲があまりにも原曲に似過ぎていたため、パロディを理解しないアタマの堅いJASRACやレコード協会、レコード会社によって著作権問題を盾に発売を阻止されてしまったのである。

こうなった原因として、写真家マッド・アマノ氏が当時写真週刊誌に連載していたパロディ写真の著作権をめぐる裁判や、台頭し出した貸しレコード業界と既存レコード・メーカー側との対立という、レコード業界がピリピリとナーヴァスになっていた時代背景があったからだと言われている。

しかし、レコード店の新星堂が予約オーダー35,000枚限定でこのアルバムを発売することとなり、何とか世に出すことは出来た。しかしこれもすぐに数社のレコード会社からのクレームによりそれ以降の発売を断念、ついには廃盤となってしまったのである。
もうとっくに熱りも冷めた時期だろうと思うのだが、実際はそうも行かなかったようで今回紙ジャケ化が見送られたことは大変残念である。メチャメチャ笑えるんだけどなあ。

ここでついでに芸人としてのタモリを改めて見つめ直してみると、彼が大変にユニークな存在だったことに改めて気付かされる。
'70年代半ばにアイ・パッチの芸人タモリが登場して以降、日本のお笑いは確実に変わった。まさに笑いのニュー・ウェーヴ到来だった。
師匠というものを持たないタモリの芸は素人芸を極め尽くした末に生まれたもので、それは漫才などのように芸人が師匠に付いて修行を積んで身につけた従来の"芸"としての笑いや台本のあるお笑いを否定する笑いで、現在のお笑い文化の基礎を築くものでもあったのである。

自分の持ちネタ以外にもバラエティ番組やトーク番組で、芸人ではない役者や歌手、タレントからキャラを引き出し、イジることで偶発的に生まれる笑いを最初にお笑いシーンのメインに持って来たのが彼である。
言い換えれば、芸人の"芸"としての笑いとは全く質が異なる、素人が偶然に生む刹那的な笑いの面白さをタモリはテレビ的エンタテインメントに変えてしまったのだった。

同時に、これ以降芸人も漫才などの持ち芸だけが優れていてもダメで、バラエティ番組でアドリブでも笑いが取れるセンスとキャラを要求され、それが出来ないといくら実力があってもテレビ的には使い物にならない時代になってしまった。ネタ以外に芸人自身が面白くなくてはダメなのである。

現在タモリが敷いたレールの上を天才的お笑いセンスを駆使して第一線で突っ走っているのが明石家さんまだが、彼を中心に今やお笑いの主流はネタ番組とともにバラエティ番組における素人レベルな笑いがテレビのお笑いの中心となった。

プロでなくてもその辺の素人でも面白ければ人を笑わせることは出来る。お笑い界に対する功罪はあるものの、面白けりゃ素人でもいいじゃん、というコロンブスの卵的な発想でタモリは素人レベルの笑いをプロの舞台へ押し上げた。
これをお笑い文化の退廃と見る向きもあるが、ある意味素人が偶然に巻き起こす笑いこそお笑いとして行き着くところまで行き着いた究極の笑いであり、これの前では従来の日本のお笑い同様、欧米のスタンド・アップ・コメディなども旧態依然としたショー・ビジネスとしてのお笑いに過ぎない。
そういう観点では現在の日本のお笑い文化は世界でも例を見ない最も進化した形態なのかも知れないと思う。なんか話が大袈裟になったけど(笑)。
くだらなくてバカバカしい面もあるが、私は概ねそんな今の日本のお笑いを面白いと感じている。

今や「笑っていいとも!」など、バラエティ番組の司会者というイメージの方が強く、もう20数年タモリがテレビでネタを披露する機会がないわけだが、そのネタが満載のアルバムが聴けるのはうれしい。
紙ジャケの発売が楽しみだが、なんとローラ・ニーロの紙ジャケと同じ発売日なんだよなあ。どっからお金出そうか・・・。


タグ:タモリ
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黒ちゃん

こんばんは^^
わたしは「タモリ2」を持っております^^;

やっと再発ですか。
久しぶりに「ソバヤ」が聴けるんですね^^/
わたしは買います!
「す~し~ほ~~~~!」(笑)
by 黒ちゃん (2007-10-28 20:38) 

MASA

kyさん、takagakiさん、初めまして。そしてルースターズさん、みなさんnice!ありがとうございます。
みなさんもタモリがお好きなんですね^^。
by MASA (2007-10-28 23:52) 

MASA

黒ちゃんさん、「タモリ2」お持ちですか。
私は初期の2枚は聴いたことはありますが、買いそびれたまま現在に至っているので、今回の紙ジャケ化はありがたいです^^。
3枚ともゲットしたいところなんですが、予算の関係で「ラジカル〜」はどうしようかなあ、と考えています。
by MASA (2007-10-28 23:56) 

ouichi

「タモリ」は小さい頃怖い、というイメージがありました。
まさに今回のジャケットのイメージです。
かなり幼かったのですがトラウマに近い強烈なインパクトがありました。
昼間にテレビに出るようになってからもその印象があって
溶け込めなかったですね~。
by ouichi (2007-10-29 01:59) 

hamakaze_ataru

「3」だけはレコードもってますよ〜!
前にもMASAさんに話したと思うけど、兄が流行歌SPレコードのコレクターなので、元ネタが自然に家に流れていましたから、コレは大笑いでしたね。「おキュウ小僧」がお気に入りでした。曲間の喋りもいいんですよね〜。
by hamakaze_ataru (2007-10-29 08:17) 

おはようございます。
これまた前回に引き続いて、わたしの物欲を強く刺激してくれましたよ。
といっても、MASAさんが紹介したおかげで、『タモリ3 』が一番欲しくなったんですが、もう手に入らないとは・・・「セーキメ節」ってなんなんですか。聞きたいじゃないですか。
何かと言えばソバヤをシャウトしてた若きタモリが懐かしい、というか還暦過ぎた今でも、過激さは表面に出ないものの、自分や対象のバカバカしさを確実に具現してみせる才能は健在で、恐れ入ってるわけです。
昔、出だしの頃は、『モンティパイソン&フライングソーサー』という、わたしの故郷の大阪では金曜深夜12時からの30分番組の最後5分間に、モンティパイソンとはなんら関係もない芸を、小ホールのようなところで披露してたのをうっすら覚えてます。なぜかチャンバラトリオも出てましたけど。
モンティパイソンより、最後5分のタモリの端芸が楽しみでした。

でも気になる「セーケメ節」
by (2007-10-29 10:43) 

MASA

ouichiさん、どうもです。
へえ、子どもだったouichiさんにとってはあのアイ・パッチが怖かったんですか。
すでに大人だった私にはちょっと想像がつきませんが、まあ子どもの目から見ると何だか理解出来ないものが恐かったりしますからね。
現在はそのトラウマは克服出来たんでしょうか。「笑っていいとも!」を見ながら未だに怖がってるってことはないですよね(笑)。
by MASA (2007-10-29 17:32) 

MASA

大安さんも「3」お持ちですか。私の周りでは数少ない所有者発見!
なるほど、戦後の古いヒット曲はお兄さんのSP盤で耳にして元ネタを知っていたので、十分笑えたってことですね。

言われてみれば、昭和歌謡をある程度知っていないと笑えないっていう側面もありますね、このアルバム。
「おキュウ小僧」の元ネタである灰田勝彦の「野球小僧」を知っている世代は大体40代後半以上でしょうから、20代や30代の人が聴いてもピンと来ないかも知れませんねえ。

♪野球小僧に会ったかい〜?♪→♪おキュウ小僧は温かい〜♪ですからね^^。
by MASA (2007-10-29 17:47) 

MASA

マルコメXさん、どうもです。
またまた物欲を刺激しちゃってすいません^^。
でもこのアルバム入手困難で、あってもスゴいプレミア価格が付いているんですよー。

「セーケメ節」はタモリお得意のハナモゲラ語で「スーダラ節」を歌ったもので、歌詞はまったく意味不明です(笑)。
今久しぶりにこのアルバムを聴いているのですが、あ〜腹いてー、爆笑!
いかにもその時代の音っぽい録音も実にいいです。

そうそう、私もテレビで初めてタモリを観たのは「モンティ・パイソン」です。札幌でも深夜にやってました。ラジオで声だけは知っていたのですが、初めて観た時はレイバンのサングラスにオール・バックという風体にギャップを感じました。
by MASA (2007-10-29 18:13) 

黒ちゃん

内容は忘れてしまいましたが
オールナイトニッポンも聴いてましたよ。
夕刊タモリも観てたし^^;
何かの番組でSOBU-TRAINなんてのもやってましたね。

モンティ・パイソン
観てました^^v
ちゃんとしたやつが観たくてしっかり揃えました。
って、話題はこっちじゃないですね^^;
by 黒ちゃん (2007-10-29 21:39) 

MASA

タモリのオールナイトニッポン、面白かったですよねー。
いろんな事件を継ぎはぎで読むニュースが面白かったなあ。
そうそう、SOUBU TRAINは初期の「タモリ倶楽部」でしたっけ?
「夕刊タモリ」は記憶にないなあ。北海道ではやってなかったのかも。

黒ちゃんさんなら「モンティ・パイソン」お好きだと思いましたよ^^。
by MASA (2007-10-30 00:16) 

おはようございます。
そう、初期のタモリはレイバンのサングラスにオールバックでしたね。

ところで、昨日寝る前にハッと気がついたんですが、モンティパイソンのテレビのタイトル。
上のコメント欄で、わたし、『モンティパイソン&フライングソーサー』と書いてますが、『モンティパイソン フライングサーカス』でした。
今朝、wikiでチェックしたので間違いないです。テレ東がキー局で、タモリのほかに今野雄二、前田美波里、二瓶正也、立木リサ = 現: 秋川リサ、天地総子が出てたとあります。
大阪版では、チャンバラトリオが絶対出てたと思うんですが、これはなかなか確かめようがないです。残念

wiki↓

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A9%BA%E9%A3%9B%E3%81%B6%E3%83%A2%E3%83%B3%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%BB%E3%83%91%E3%82%A4%E3%82%BD%E3%83%B3
by (2007-10-30 10:49) 

MASA

マルコメXさん、どうもです。
私もうっかり気が付きませんでしたが、そうですね、フライング・サーカスですね。
二瓶正也と天地総子なんか出てましたっけ?他のメンツは覚えがあるんですけど、何しろもう30何年前だからなあ(笑)。

チャンバラ・トリオは私も覚えがありますよ。タモリの出るコーナーに週変わりで交互に出ていたような気がしますが、あるいはそれとは別のコーナーだったかな。それも記憶が定かではないです^^。
by MASA (2007-10-30 14:21) 

てらだ

「タモリ3」が限定で出ていたとは知りませんでした。
当時テレビでちょこっと紹介されたのを見て「これは面白いぞっ!」と期待していたら発売中止となって残念な思いをしていましたが、いつの日か陽の目を見ることを願います。

発売中止となった当初のジャケットはこれと同じだったのでしょうか?
by てらだ (2007-10-30 22:15) 

MASA

てらださん、こんばんはー。

ジャケは中止になったものと全く変わっていないようです。
ただレコード番号は変わったようですね。もちろんその最初のレコード番号のものは世に出回っていないです。

紙ジャケでなくてもいいから、いつかCD化されて欲しいですね。
by MASA (2007-10-30 23:23) 

黒ちゃん

最近観なくなってしまったタモリ倶楽部ですが
You Tubeでソラ耳アワー発見しました。
わたしが大爆笑したネタの公表はさすがにできません^^;
皆さんチェックして笑いましょう^^/
by 黒ちゃん (2007-10-31 21:13) 

MASA

私も以前に空耳アワーを偶然にですが、いろいろ見つけたことあります。
懐かしいネタがいろいろありました^^。
しかし、下ネタが多いですよねえ。黒ちゃんさんのお気に入りも下ネタですか?(笑)。
by MASA (2007-10-31 23:12) 

chitlin

MASAさん、こんばんは。
司会のタモリしか知らないchitlinです。
『タモリ倶楽部』なら欠かさず観るようにしていますよ。

『タモリ』CDで持っていまして、そろそろ2枚目もと思っていたらいつの間にか廃盤の憂き目に・・・。
「タモリ3」の再発は無理のようですが、せっかくなので今回の3枚を揃えてみたいところです!年越しが心配ですけれども!!
by chitlin (2007-11-01 00:34) 

MASA

chitlinさんも芸人タモリを知らない世代ですね。
「タモリ」のCDお持ちですか。貴重ですね。
紙ジャケ3枚ともいっちゃいますかー。ホント年末が大変です^^。

北海道ではさっき「タモリ倶楽部」やってたんですが、今日のは70年代の歌謡インストもののレコード特集をやってましたね。
プログレ風五木ひろし、面白かったです^^。
by MASA (2007-11-01 02:33) 

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