■ 私流「いい音楽のススメ」 ■ロック、ジャズ、クラシック、ポップス、ワールド・ミュージック、J-POP、歌謡曲、演歌、民謡など、音楽には様々なジャンルがありますが、しかし突き詰めると音楽はたった2種類しかありません。
それは
「いい音楽」と「そうでない音楽」。
その基準はもちろん人それぞれで、聴く人の音楽的スキルや趣味趣向など経験値で違うと思いますが、その中で私たちはまず
「好き・嫌い」というかたちでそれを自然に選択しています。
しかし、「いい音楽・そうでない音楽」と「好き・嫌い」はニュアンスが異なります。
いくらいい音楽でもその人にとってはそれが嫌いな場合があり、あるいはその逆もあります。
ここでいう「いい音楽・そうでない音楽」というのは、「好き・嫌い」という単純に感情から来るものではなく、客観的に見てその音楽がどういう中身なのか、要するに
音楽性ということです。そしていい音楽を聴くことによって本物の感動がもたらされ、感性が磨かれ豊かになります。
私は自分が興味を惹かれたものはジャンルに拘らず聴き、出来るだけ「食わず嫌い」にはならないように心がけています。しかしろくに聴きもせずにイメージや先入観だけで嫌い・苦手と思い込んでいる音楽やアーティストがみなさん誰しもお持ちだと思います。
私も多少はそうですし、ちょっと聴いただけで音楽性の低さがすぐ露呈するような全部聴くまでもないアーティストは実際いますが、それでもまずは嫌いなものでも一応ちゃんと聴いてから音楽性のいい・悪いを判断しようと思います。一応でも聴かないうちは批判する前に何も語る資格がないように思うからです。それに聴かず嫌いは結局損である場合もあります。
私のような変にマニアックなリスナーは別にすると、普通のリスナーは音楽性云々の前に単純に好き・嫌いだけで選んで音楽を聴いています。それがごく普通の聴き方で何ら悪いことではないのですが、深く音楽を知らないために、非常に音楽性の低いものをそうとは気づかずに聴かされている場合が多いことが問題です。これは特に今のJ-POPに多く見受けられるのですが、オリコンのシングル・チャートに入っている曲のうち半分以上は私が思う分にはどう聴いてもつまらない曲ばっかりです。
ロック系だとやたら派手なアレンジで大した工夫もなく、音数がアホみたいに多く音圧も高くてただうるさいだけでまるでロックを感じないし、かと思うとどれもこれも似たようなイメージで似たような曲を歌う女性歌手がたくさんいて、一瞬では見分けが付きません(笑)。
歌詞の内容もありきたりな恋愛ソング、押し付けがましい人生の応援歌、お互いの傷なめ合って明日へゴー!的なものばっか(笑)。
こういう出来の悪い音楽に何の疑問も持たずに熱中出来る人は、こんなものよりもはるかに優れた音楽があることを全く知らないのです。聴く機会もないのでしょうが積極的に聴こうとも思わないんだと思います。でもそういう人たちに罪があるわけではありません。音楽を提供する側に罪があるわけです。
提供する側は肝心の音楽性は二の次で、とにかく何でもいいから売れればいいわけです。
「いい音楽」かどうかを見極めるにはどうすればいいでしょうか。それには、まずは心底から音楽が大好きであること。これは最低限の必要条件。音楽はまあまあ好きとか、たまに聴く程度、なんていう人はあまり音楽を語らない方がいいでしょう。
ある程度のスキルを持つ音楽好きの人であれば、ジャンルに関わらず自分がいいと思った音楽をたくさん聴く、これも基本です。これでかなり耳が肥えます。J-POPしか聴かないとかハード・ロックしか聴かないとかという偏った聴き方をしている人、あるいは年間で2、3枚しかアルバムを買わない、なんていう狭い選択範囲しかなければ音楽性の見極めは出来るようになりません。そういう人はいつまでも底の浅い単なる好き嫌いでしか音楽を捉えられません。
ここまで読んで「しちめんどくせーゴタクをいつまでグダグダ並べてやがるんだ、どんな聴き方しようが人の勝手だろーが。アホかオメェは!」と思った人、それは正解です(笑)。
私がここまで書いて来たことはまさにおせっかいだということは百も承知しております(笑)。端から見て下らないとしか思えない音楽でも、その人が好きならばそれでいいのかも知れません。
ただ、せっかく音楽を聴くのならいい音楽を選んで聴きたいじゃないですか。音楽性の低いつまんないものばっかり聴いてると感性が乏しいままだし、業界も「この程度のものでリスナーは満足するんだ」と勘違いして、音楽文化の低下を招きます。商業主義にドップリと浸かって音楽性の低い似たようなアーティストばかりをデビューさせ、個性のない音楽ばかりが世の中に氾濫します。
そういうつまんない音楽を聴いて育った人がつまんない音楽を繰り広げるアーティストとなってデビューし、そしてそれを聴いて育った人が・・・と、負のスパイラルに陥って行きます。音楽のデフレ・スパイラルです(笑)。
すでに日本の音楽業界のメインストリームは昔から半ばこのような状況で、没個性的で毒にも薬にもならない、つまらないアーティストが負のスパイラルによって次々に世に出ていつまで経っても業界の水準が上がりません。これはリスナーにとっても業界にとっても由々しき問題です。
クルマのデザインにしてもファッションにしても、そして音楽にしても個性を大事にせず安全パイの二番煎じばっかりが好きな国、日本。これでは何も新しいものは生まれません。
音楽業界は我々リスナーにいい音楽を供給しなければならない義務があると思います。これをやっていないことが近年の業界不振の大きな原因のひとつになっているはずです。ハズレがない過去の定番作品を何回も再発したり、紙ジャケだ、限定盤だと、目先だけを変えたところでこの状況は簡単には改善しません。問題はそこではなくパッケージの中身なのは明白です。
そういう意味でいつかはこのスパイラルをどこかで断たなくてはなりませんが、それは非常に難しいのが現状です。それによって業界全体が変化することを今の業界人が望んでいるわけもなく、それどころか今の状況に別に誰も不満や疑問など持っておらず、思考停止と言ってもいいくらい現状に対して無自覚だからです。これは情けない話です。
というわけで、業界がいい音楽をリスナーに供給することと同時に、我々リスナーも出来るだけいい音楽を選択出来る耳を持っていなければ日本の音楽はいつまで経ってもダメだと思います。
どのアーティスト、とは言いませんが、水準の低い音楽を聴かされていることに全く気が付かず、それどころかそれを喜んで聴いているなんてあり得ません。まあ気が付かないのなら死ぬまで気付かなければそれで幸せかも知れませんが、でもそれでホントにいいのでしょうか?そんな詐欺みたいなことは私なら真っ平ご免です。
なんだか途中から取り留めのない話になってしまいましたが(笑)、私流の「いい音楽のススメ」でした。
★ 今日の1曲 / "Wish I" By Jemファイナリー・ウォークン
- アーティスト:
- 出版社/メーカー: BMG JAPAN
- 発売日: 2005/05/07
- メディア: CD